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ぐんようそ

軍用鼠

海野 十三

「新青年」博文館、1937(昭和12)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,659 字 · 37 页

青空文庫

の連鎖事項を探して、謎の答を推理してゆくのとはちょうど逆の順序になる。そこに逆ハ必ズシモ真ナラズが侵入する余地があるのである。

――と、かれ梅野十伍は二、三枚の原稿用紙を右のように汚したが、これは探偵小説じゃないようだ。けっきょく探偵小説論の小乗的解析でしかないから、こんなものを編集局へさし出すわけには行かない。

彼は折角書いた原稿用紙を鷲づかみにすると、べりべりと破いて、机の下の屑籠のなかにポイと捨てた。始めからまた出直しの已むなき仕儀とはなった。しかし彼は、さっきまでのように、時計の指針をあまり気にしなくなった。ソロソロ小説書きの度胸が据わってきたのであろう。

――女流探偵作家梅ヶ枝十四子は、先日女学校の同窓会に招ばれていって、一本の福引を引かされた。それを開いてみると、沂水流の達筆で「鼠の顔」と認めてあった。

「十四子さん、貴女の福引はどんなの、ね、内緒で見せてごらんなさいよ」

「――エエわたくしのはホラ『鼠の顔』てえのよ」

「アラ『鼠の顔』ですって、アラ本当ね。まあ面白い題だわ、なにが当るんでしょうネ」

「さあ、わたくしは皆さんと違ってまだチョンガーなんだから、天帝もわたくしの日頃の罪汚れなき生活を嘉したまい、きっと素晴らしい景品を恵みたまうから、今に見ててごらんなさい」