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ぐんようそ
軍用鼠
海野 十三
「新青年」博文館、1937(昭和12)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,659 字 · 37 页
そうなると、門の脇に取りつけてある郵便新聞受の金属函がカチャリと鳴り響くはずだった。それが夜明けの幕が上る拍子木の音のようなものであった。
彼は福引の話をとにかく物にして、すこし気をよくしていたが、それにしても、福引の話は飽くまで福引の話であって探偵小説とはいい難い――といわれやしないだろうか。
「さあ、早く探偵小説を書かなきゃあ!」
と、梅野十伍は、自分の勝手な清掃癖が禍をなしてペンの進行を阻んでいることにも気づかず、またやっこらやと立ち直って、探偵小説狩りに出発するのであった。
誰が見てもなるほどそれが探偵小説らしい形式を備えていることが分るようなものを選んで書くのが賢明なやり方だ。そういう形式を採ってみようと、梅野十伍は考えた。
それでは国際関係険悪の折柄、ひとつ国境に於ける紅白両国の人間の推理くらべを扱った探偵小説を書いてみることにしよう、と梅野は決心した。
まず道具立を考えるのにここは紅白両国の国境である。あまり広くない道路が両国を接いでいる。その道のまん中あたりに、アスファルトの路面に真鍮の大きな鋲を植えこんで、両国国境線がひと目で分るようになっている。