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ぐんようそ

軍用鼠

海野 十三

「新青年」博文館、1937(昭和12)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,659 字 · 37 页

青空文庫

作家梅野十伍は、拳固をふりあげて、自分の頭をゴツーンとぶん擲った。彼は沈痛な表情をして、またペンを取り上げた。

「旦那ァ。昨日は朝っぱらから来たと叱られたので、きょうはこうして午後になってやってきましたぜ」

「うむ、レッドだな。貴様は怪しからぬ奴だ。昨日儂を胡魔化して、鼠を一匹、密輸入したな。儂は今朝になって、それに気がついた」

「エヘヘ、手前はそんな悪いことをするものですか。旦那がいけないと仰有ったので、鼠を一匹籠から出してポケットに入れました。それはちゃんと自分の家まで持ってかえって放してやりましたよ。嘘はいいませんや」

「そんな口には乗らんぞ。員数外の鼠を自分の家に放したなんて怪しいものだ」

「いえ、本当ですとも、だから今日はちゃんとこの籠の中に入れて来ました。ごらんなせえ、アレアレ、あの腹が減ったような顔つきをしているやつがそうです」

「もういい。鼠が腹が減ったらどんな顔をするか、儂にゃ見分けがつかん。――で、籠は改造して来たろうな」

「へえ、チャンと改造して来ました。籠を置いても、その下が汚れないように、これこのとおり籠の下半分を外から厚い板でもって囲んであります。