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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

実際子供等は、鍋のものの煮えるのを待ちあぐんで居るらしかった。

こんなにも食べたく、こんなにも待ち遠がるほど三度三度の食事は、子供達の腹をみたすだけ十分でないのだろう。

育つ勢の盛なる子供達はたとえその度毎にあきあきするほど食べても、又その次の時には、前に一口も何も食べなかった様に待ち遠がったり、食べたがったりするものだけれ共、その度毎十分にたべて又次に待ち遠がる子供の眼は必して、今これ等の子供達が持って居る様な眼は持つものではないのである。

何と云う熱心な、又何と云う緊張した眼の色だろう。子供等の頭の中は、鍋のもので満ち満ちて居るに違いない。非常に、たくましい、想像力をもってそのやがて自分等の口に入って来るものを想って居るに違いない。子供達はあんまり熱心になって居るので、其の一粒さえ半粒さえ勿体ながらなければならない麦を俵の外から嘴を入れてあさって居る鶏の事に気がつくものは一人もないのである。一羽の衰えた雄鳥と四羽の雌鳥は子供達の眼をかすめて、早い動作をもって、豊かでない腹をみたして居る。人間も鶏も食物に対する饑えたものの特別に緊張した気持で一方は一瞬の間でも早く自分等の口に煮物が入る事を望み、一方は、無意識の間に一粒でも多く食べ様とする様子で居る。