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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

といやな顔をする。見かけによらない話を沢山知って居る婆さんだ。

祖母は年柄ではさぞ信心っぽい人の様だけれ共案外で別に之と云う宗教も持って居ないので、私達のところへ来ると熱心に「あみださま」の講釈をする。

口振りでは、彼の世に、地獄と極楽の有る事を信じて居るらしい。一体、村の風で非常に信心深い村もあるが此村はさほどでもなく、他人の家へ来て仏様の話をするのは此の婆さん位なものである。後生願いの故か行儀は良い。働き者でもあるから祖母は好いて居る。

婆さんは家へ来ると井戸端ですっかり足を洗い、白髪を梳しつけてから敷居際にぴったりと座って、

「ハイ、御隠居様、御寒うござりやす。御邪魔様でござりやす。

と云う。

歩いて居ると体はまっ直になって居るが、座るとお腹を引っこめて妙に膝が長い形恰になって仕舞う。

婆さんはこの前の日まで中学の教師の家へ手伝に行って居たとか云って、

「めんごい赤坊さまでござりますぞい。眼が大きゅうて、色が抜けるほど白くてない。先生様、そっくりでいなさりやす。奥様も順でいなさりやすから昨夜お暇いただいて来やしたのえ、父様も母様も、眼の中さあ入れたいほど様子で居なさる。