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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
赤坊のうちは乞食の子さえめんげえもんだっちゅが私でも赤坊の時があったと思やあ不思議な気になりやすない御隠居様。
他愛もない声を出して笑う。
「そうそう、私がお暇いただく三日ほど前にお国の母様が、東京さあ嫁づいて居なさる上の娘さんげから送ってよこしたちゅうて紫蘇を細あく切って干た様なのをよこしなすったんですがない、瓶の蓋が必してあきませんでない又、東京さ、たよりして、どうして使うべえてきいてやりなすたのえ。御隠居様あ、御存じなんべえから、分ったらちょっくら教えてあげて参じ様と思いましてない。
「蓋に紙が張ってあったんだろう。
「ありやした、色取った紙が。
「その紙をあけると、蚤取り粉の曲物の様に穴の明いた蓋になって居るからそこから御飯にかける様になって居るんだよ。しめりがこない様にそうするんだろう。
「そうでやすか、そんで始めて合点が行った。田舎者はこれですかんない。
一寸背をちぢめる様にして愛素笑いの様な事をする。祖母は婆さんに与うと思ってカステラを丁寧に切って居る。何にも慰みのない祖母は東京から送ってよこすお菓子を来る者毎に少しずつ分けてやって珍らしい御菓子だと云って喜ぶのを見るのを楽しみにして居る。