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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
大抵は白い様な髪を切りさげて体からいつも酸っぱい様な臭いを出して居るが、それは必して胸を悪くさせるものではなく、そのお婆さん特有の臭いとして小さい子供達や、飼いものがなつかしがるものである。笑う時にはいつもいつも頭を左の肩の上にのせて、手の甲で口を押える様にして、ハッハッハッと絶れぎれに息を引き込む様に笑った。その様子が体につり合わないので、笑う様子を見て居る者がつい笑わされるのである。
「まあ、貴方、郡山(町の名)さ芝居が掛りましたぞえ、東京の名優、尾上菊五郎ちゅうふれ込みでない。外題は、塩原多助、尾上岩藤に、小栗判官、照手の姫、どんなによかろう。見たいない。
祖母の顔を見るやいなや、婆さんは、飛び立った様にその小さい眼をかがやかしながら云う。
「行ってお見ねえか?
「私は、あすこまで歩くのが事でなし、郵便局のお政さんとでも行けばいいに。
「お政さんとかい?
「ほんとに菊五郎が来るんでしょうか。
私がきく。
「去年も来ましたが、から下手の下手でなし、この間、初日に、お徳さんが行ったちゅが去年のと顔が違う様だって云ってましたぞえ。
「まあまあ、菊五郎の名だけ来るんですねえ。