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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

花嫁様、さがすべえし、もうけ口さがすべえしない。百姓には、したくないちゅうてなし。中学出したからですぺ。

婆さんは思い出し笑いをして肩をすぼめる。其の息子がまだ中学に居た頃、この婆さんの家に居て通って居たが、お針に来る娘が夢中になって可笑しいほどだったが、いつの間にか噂が立って娘はお針に来なくなった事を「さもさも若い者が」と云った口調で変に笑いながら話す。

村の子がその息子に娘からの手紙を持って来たが留守だったので、婆さんが受け取って帰って来た時渡したら、火の出る様な顔をしてすぐ外に出て行ったなどとも云った。

「十七か八で色は白し、眼は大きし、ほんに小栗判官の様でなし。あの娘も、ここらの娘にしては、小綺麗な娘でしたぞえ、私の家へ来ん様になってから判官様は夜おそくまで帰らん事がよくありましたっけし。逢うて来るのだっぺ。まだ嫁かさらんちゅうことだてば、判官様に、嫁様が来ただら、化けて来べえて、ハッハッハッ。

お婆さんは、いつもの通り顔をまげて笑う。

「三年、日に照らされづめで来たのだでは、あの白いのも狐色位になったろう。

村の聞新しい事柄がいつもこの婆さんの耳へどうしたものか先ず第一に入るものと見える。