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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
四辺の木立はすっかり枯れてしまった。三番池の周囲の草原の草は皆、かれはてて、茶色になり、朝々の霜で土がうき、ポコポコになって、見通せる限り皆、なだらかなでこぼこになって居る。桑は皆葉をはらい落して、灰色のやせた細い枝をニョキニョキと、あじきない空のどんよりした中に浮かせて、その細いに似合わない、大きな節や「こぶ」が、いかにも気味の悪い形になって居て、見様では、よく西洋のお伽話の插絵の木のお化けそっくりに見え、風が北からザーッと一吹き吹くと、木のお化けは、幾百も幾千も大きな群になって、骨だらけの手をのばして私につかみかかろうとする様だ。川の水も減って、赤っぽい粘土のごみだらけのきたない処が見え出し、こちこちになってひびが入って居る。小魚の姿などはとうにから見えないのである。
町につづいて居る小高くなって居る往還は、霜が降っても土は柔くなろうとはしず、只かしかしにかたまって、荷馬はよく蹄を破るし、人は下駄を早くいためる。電信柱は、ブーン、ブーンと、はげしいうなりを立て始めた。
何と云う寒い淋しい事だろう。灰色の空は、はてしもなく重くおいかぶさって、晴れ渡る時は極く少ないうちに夜になって仕舞う。