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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年4月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 页
そんな状態で、病人と介抱人が日本一の神様みたようになってグーグー眠ってしまいましたが、その中に大惣の声で……、
『オイオイ。湊屋。起きんか。モウ正午過ぎぞ』
と云うて私を揺り起しますので、ビックリして跳ね起きますと……ナント……大惣が起きて、私どもの枕元に座っております。神霊の上がったようなポカンとした顔をしております。
『ウワア。貴様……起きとるとや』
『ウン。気持のええけに起きてみた』
『何や。……全快ったとや』
『ウン。今、小便に行て来たが、ちいっとばっかしフラフラするダケじゃ。全快ったらしい』
『ウワア……それは大変事の出来とる。いま全快っちゃイカン』
『イカンち云うたてチャ俺が困る』
『コッチも困るじゃないか。貴様の生胆の手附の金をばモウ崩いてしもうとる』
『何でもええ。貴様に任せる。生胆の要るなら遣る』
『馬鹿……今、貴様の生胆を取れあ、俺が懲役に行くだけじゃないか……おいツン州……大変事の出来たぞ』
『……芽出度い……』
『殴わせるぞ畜生。芽出度過ぎて運の尽きとるじゃないか』
『ドウすれあ良えかいな』
『仕様はない。逃げよう。支那人が来て五円戻せチュータてちゃ、あの五円札は酒屋から取戻されん。