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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年4月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 页
まあまあ待ったり、君等は自分の用事さえ済めば、アトは俺が死んでも構わない了簡だろう。自分の尻を他人に拭いてもらう奴を小児といい、自分の垂れ物を自分で片付ける奴を大人という。君は元来大人なのか小供なのか。前をまくって見せろ……とか何とか云って追っ払ってしまうが、その手の利かない奴は、仕方がないから前に倍した手酷い手段で押し片付けて行く。明日の事は考えない。きょうさえ片付けばいいという方針だから、何を持って来たって驚かないんだ。
尤もこの頃は年を老ったせいか、人に会うのと、字を書くのが大儀になった。心臓にコタエて息が切れたり脈が結滞したりするから、面会と字書きを御免蒙っている。一方から云うと、そんな自分の尻を持て余しているような連中の尻をイクラ拭いてやったって相手は当り前だと心得ている。俺に尻を拭いてもらうのを楽しみにイクラでも不始末を仕出かす事になる。結局、そんな世話を続行するのは日本亡国の原因を作るようなものだとつくづくこの頃思い当ったせいでもあるんだがね」
こうして縷述して来ると彼の法螺の底力は殆んど底止するところを知らない。
「自ら王将を以て任ずる奴は天下に掃き棄てる程居る。