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じじょにかえて
近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎
蔵原 伸二郎
蔵原伸二郎『近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎』。同一底本的分册已合并为一书。收入:自序にかえて、秋、五月の雉、狐、岸辺、岩魚、足跡。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,296 字 · 17 页
系図は巻物ではなく、ばらばらの紙だ。
それがいきなり風に舞いあがつた。
あわてて私がおさえていると、
老人はぽつんといつた。
「こんなもん、やくてえもねえだ」
たしかに系図は近世の写しであつた。
が、ともかく
祖先は丹治比古王の一族であろう。
「承和甲寅元年、従四位下実近(王孫)武蔵守として田辺が城に住す。」
またその十九年後には
「仁寿三年二月二十三日、在原業平ここに来る。」とある。
日付があんまりはつきり書いてあるので、私の頭が少しおかしくなつた。
私は青毛の馬にのつた業平朝臣といつしよに、老人に別れをつげて去つた。
二十九歳の業平が私の前を行く。
畦道がせまいので、どうしても私は馬の尻にくつつくことになる。
おおよそ半町ほど馬のあとについて歩いた。
業平は一度もふりむかなかつた。
竹藪の前で馬は左に曲つた。
私は馬の尻に最敬礼をして別れた。
しばらく行つてふりむくと、
高麗郷へ行く坂道の頂上で
西陽をうけた馬上の業平の姿が
一瞬くつきり浮かんですぐ消えた。