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ちかごろのかんそう

近頃の感想

宮本 百合子

「文芸評論」1934(昭和9)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,874 字 · 12 页

青空文庫

巻頭言の筆者は批評の方法こそ唯物弁証法に導かれねばならぬといっているのであるから、それを実際問題としてあてはめてみると、たとえばそういう図式主義批評の傾向が再び起って来たような場合、くだらぬことだけいい去らず、その要求が若い批評家の間に起るに至った社会的根源、要求の背景にまでふれて、客観的に批評されていいのではなかろうか。

戸坂氏などは、文芸批評というものが多く主観的であるという現状のままを認容した上で、それより客観性、科学性において立ちまさったものとして別個に文明批評の出現をとりあげているのである。

それとは異ってプロレタリア文学批評の分野に、『文学評論』の巻頭言が警告しているような、唯物弁証法の図式的批評が「再発」しているということは、それが「再発」であるということのために、私はひとかたならぬ関心をよび起されたのである。

なぜなら、私自身、前にも書いたとおり、かつて作品批評に際して唯物弁証法の幼稚な機械的適用をやって、左翼的逸脱の危険を犯した経験をもっている。それにはそれで、当時のプロレタリア文学運動の情勢がきわめて有機的に私の心持に作用していたのであった。