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めいさい

迷彩

上村 松園

「大毎美術 第十八巻第十一号」1939(昭和14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,142 字 · 5 页

青空文庫

箱書に持って見える人は、恐らく、他から手に入れたものに違いありませんが、そんな直し物などとは知らずに持って来られるのでしょう。また知っていたら持って来られもしないだろうと思います。

ついこの間も、ある方が松篁の作品を持って来られて、箱書を頼んで帰られたのですが、あとで松篁がその作品を箱から出して見ますと、作品は確かに松篁のものに違いはないのですけれど、画いてある白桔梗の下に、当人の知らない蟋蟀が二ひき描き加えられてあったので、松篁はぷりぷり怒ってしまいまして、こんなものに箱書ができるかと申すのです。これは成程もっともなことで、自分の作品に、他人が手を入れたものへ、箱書などできない道理です。これなど、蟋蟀を描き加えたために、かえって作品が立派になっているのかも或いは知れませんけれども、立派になろうが悪くなろうが、そんなことはどうあろうと、とにかく、自分の作品としてはすでに不純になってしまっているのですから、これは箱書などできないのが当然と思います。

実を申しますと、こんな場合、決して作品が立派になってはいないのです。この蟋蟀だって誠に拙ないもので、その点お話にならないものでした。