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ついそう

追想

宮本 百合子

「婦人之友」1922(大正11)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,582 字 · 8 页

青空文庫

また、誰でも、一々友達じゅうに、自分の結婚を告げ歩く人はいない。時には、十人の中四人も知らないうちに、その人の名は、すっかり異ったものになっていたという有様なのである。

勿論深田さんという人も、同級会の幹事が知らせて来る以上、組の中の一人であったには相違ない。誰だろう。お産で死なれたとは気の毒に思う。誰だろう。――考えても、当が付かない。

自分はちっとも心に誰という明かな感じもなく、従って、真面目にさほどの悲しみをも感じない空な名に、御香奠を送る気にはなれなかった。何だか嘘で、自分はただ出せと云われた金を出したという心持ばかりがする。

漠然と、誰かが死んだというだけの感で、私はそのままにしておいた。他に迫った用事があり、夜はもうすっかりそのことを忘れていたのである。

それから一ヵ月ほどそこに滞在して帰京して間もなく、級会があった。私は、正月から、まだその年は一度も出席していない。余り御無沙汰になるので、雨の降る中を出かけて行った。そして、皆の、賑やかな、笑い、喋る姿を見ると、ふと自分の心に、先達っての名が浮んで来た。私は、幹事をしていた人に、

「先達ってのお葉書ね、私、深田さんという方が、どなただか、まるで分らないからあのままにしてしまったけれど。