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ついそう
追想
宮本 百合子
「婦人之友」1922(大正11)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,582 字 · 8 页
大抵の者は、もう人の妻となり、或は親となっていても、彼女の眼を見ると、皆、仲間同士の正直な、打明けた表情は圧せられてしまう。堅くなり、他人行儀になり、生徒であった時の義務の感などが甦って来る。十三四から十八九迄、毎日見た顔、指導された心に対して、それほどの距離が、彼女と自分等との間には在る。
まるで教室にでもいるように、一斉に立って迎えた中を、辞儀と愛素よい笑とを振撒きながら入って来られる様子を見、自分の心は、悲憤ともいうべき激情に動かされた。
あの平気な顔、自分の仕たことに一つの間違いもなかったのだと云いたげな風。私は、
「深田さんが死んだとお聞きになった時、どんな気持がなさいました」
とききたいほどの心持がした。
彼女は、いささかの苦痛、可哀そうだった、という悔恨は感じなかったのだろうか。あの笑い!
毎日毎日、変転して行く生活の裡で、たとい彼女が瞬間、心の痛みを感じたとしても、それを、今、この場所まで持ち続けて来ることは不可能であろう。
あの時の、自分の激昂した心情は、そのままで彼女に対し、或は公平でないものであったかも知れない。
然し。――
ちょうど、私共が五年の時であった。