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ついそう
追想
宮本 百合子
「婦人之友」1922(大正11)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,582 字 · 8 页
云われた者は、教えられた感謝より、いつも、苦々しい悪感、恥かしさ、敵慨心を刺戟されるように扱われるのである。
中には、一人二人、特にいつも目をつけられ、ことごとに冷笑を浴びる者もある。
それでも、その朝は無事で、大抵の者が通り抜けた。もう少しで皆行ってしまおうとする時、傍にいた先生の眼は俄にきっと鋭くなった。何事かと思う間もなく、一二歩前に出、
「今沢さん!」と、大きな叱る声で呼ばれた。
今沢さんと呼ばれたおつやさんは、無邪気な歩きつきから、はっとして先生の方を向いた。
「何です、その顔は! 早く洗っていらっしゃい。すっかり落していらっしゃい!」
見る見るそこにいた六七人の者は、緊張した。真赤になったおつやさんの顔を見ると、少し濃い目ではあるが、のびよく美しく白粉がついている。
どうなるかと思う自分の眼の前で、おつやさんは、さっと涙に眼を曇らせ、訴えるように、哀願するように、先生を見た。が、先生の顔には、相手が、未だ十八の、少女であるのを忘却したほどの憤り、憎しみが燃えている。
一二秒、立ち澱み、やがておつやさんは、矢絣の後姿を見せながら、しおしお列を離れて、あちらに行った。