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とうめいねこ

透明猫

海野 十三

「少年読物」1948(昭和23)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 10,223 字 · 21 页

青空文庫

崖下の道

いつも通りなれた崖下を歩いていた青二だった。

崖の上にはいい住宅がならんでいた。赤い屋根の洋館もすくなくない。

崖下の道の、崖と反対の方は、雑草のはえしげった低い堤が下の方へおちこんでいて、その向うに、まっ黒にこげた枕木利用の垣がある。その中にはレールがあって、汽車が走っている。

青二は、この道を毎日のように往復する。それは放送局に働いている父親のために、夕食のべんとうをとどけるためだった。したがって、青二の通るのは夕方にかぎっていた。

その日も青二は、べんとうを放送局の裏口の受付にとどけ、守衛の父親から鉛筆を一本おだちんにもらい、それをポケットにいれて、崖下の道を引っかえしていったのである。

あたりはもう、うすぐらくなっていた。

まだ春は浅く、そしてその日は曇っていて、西空に密雲がたれこみ、日が早く暮れかけていた。

青二は、すきな歌を、かたっぱしから口笛で吹いて、いい気持で歩いていった。

そのとき、道ばたで、「にゃーお」と、猫のなき声がした。

青二は猫が大好きだった。この間まで、青二の家にもミイという猫がいたが、それは近所の犬の群れにかこまれて、むざんにもかみ殺されてしまった。