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とじょうのはんにん
途上の犯人
浜尾 四郎
「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页
濡れぬように軒のへりに沿って歩きながら、この寒い中に立ちつくしました。ここは一面の畑で誰も通るおそれはなかったのです。こうやって、二歳になる赤児が、一時でも早くこの烈しい寒気の呪いを受けるようにと祈ったのでした。
私は全く悪魔でした。ひろ子は殆ど素裸体にして抱きながら自分は戦慄しつつもまるで寒さを忘れていました。烈しい伊吹颪に我が子をさらしながら、自分では少しも寒くなかったような気がするのです。
妻が帰って来ては事面倒ですから、暫時にして私は家に入りました。再び暖い着物をきせて、自分はゴロリと横になりながら、何くわぬ顔をして妻の帰りを待っていたのです。
私は、この悪魔的方法の効果がすぐ現われるかと思って居ました。けれど翌日になっても別にどうもないのです。次の日は雪はやみましたが寒さは一層加わりました。この夜、同じような機会に又同じ方法で、ひろ子を寒風に曝したのです。雪の上におく事も考えないではありませんでしたが、もし凍傷でも出来ると証拠が残ると思ってこれはやめました。
二回の試みは遂に成功しました。ひろ子はその晩から非常な高熱を出しました。私には、無論そのわけは判っていましたが妻にははじめよく判らなかったらしいので、結局、医者がかけつけたのはその日の夕方になってしまったのでした。