轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とじょうのはんにん
途上の犯人
浜尾 四郎
「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页
相手は不相変にやにやして居る。
「私はごくつまらぬ田舎の教師ですが……××先生でいらっしゃいましょうね」
「ええ僕は××ですが……」
「いや私もそう思って居りました。一昨夜電車の中でお会いした時も、たしかに雑誌で見た先生のお顔だと思ったのですが、つい申しそびれて……今日ここで偶然お目にかかったのは、ほんとうに幸いです」
何が幸いなのか、私には少しも判らない。
「先生の御作はいつも愛読して居ります」
「いや、それはどうも恐縮で」
小説家に対する最大のお世辞は、その文章を読んで居る事である。従って、こっちから云えばはたしてほんとうに読んでそう云って居るかどうか判らない、と云う事になるので、当らずさわらずの、いいかげんの返事をしておいた。
「近頃ずい分探偵小説が流行するようですが結構です」
「結構だかどうだか判りませんよ」
この返事は私としては極く意味のない言葉だったのだが、相手は急にきっとなって云った。
「先生、先生はほんとうにそう思いますか?」
「何がです」
「つまり、今のようなこんな探偵小説流行の風潮を結構だとは思わない、若くは嘆かわしいとお考えになるのですか」
これは真面目な問題である。