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とじょうのはんにん
途上の犯人
浜尾 四郎
「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页
「先生一ついかがです」
とやった。
私は元来一滴も酒を口にしない上、この日は法律家としてやむを得ない旅行をして居るので、目的地に着けば相当仕事の上のまじめな準備もしなくてはならず、その上こんな得態の知れない男に何を呑まされるか判ったものではないから、きっぱり拒絶した。全く拒絶の形だった。辞退したのではない。拒んだのである。
なめくじ男は、拒絶されても一向平気で、
「ではやむを得ません」
と云いながら、自分で一杯生のままでのみほした。気がつくと、もう前から少しやって居るらしく、目の中が少し紅くなって居る。
「で、先生、さっきの話ですが……」
又してもさっきの論題である。
「私は、探偵小説家たる先生に、そうです、特に先生にはっきり申し上げたい」
この時、なめくじ男の顔から、俄然なめくじらしい表情は消え去って、鎌首をもたげた蛇のような鋭いようすが現われた。なめくじ男、否もはやそうではない、蛇男は更につづける。
「私は先生のような人が、ああいう小説をよく書いて居られると思うのです。実に不思議でならないのです」
「というと、どういう事ですか」
「先生は元検事でしょう? そうして今弁護士です。