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とんそう

遁走

葛西 善蔵

「新小説」1918(大正7)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,581 字 · 23 页

青空文庫

私は笹川の得意さを想うと同時に、そしてまた昨日からの彼に対する憤懣の情を和らげることはできないながらに、どうかしてH先生のような立派な方に、彼の例の作家風々主義なぞという気持から、うっかりして失礼な生意気を見せてくれなければいいがと、祈らずにはいられなかったのだ。

私の席の下の方に、知らない人たちの間に挟まって、今さらのように失意な淋しい気持で、坐っていた。やがて佐々木は、発起人を代表して、皆なの拍手に迎えられて、起ちあがった。それはかなり正直な、明快な、挨拶ぶりであった。

「……いったいに笹川君の書くものは、これまでのところではあまり人気のある方では、なかったようです。それで、今度の笹川君の労作にかかる長編の出版されるについては、私たち友人としては、なるべく多くの人気の出ることを、希望しないわけには行きません。それで笹川君のために、私たち友人が寄ってこういう会を催そうというような話は先からあるにはあったのですが、しかし私はその後会のことについてはいっさい相談を受けておらないのです。それでいったいどんな文句の葉書が皆さんのところへ送られたのか、じつは私としてはまったく突如に皆さんの御承諾の御返事をいただいたような始末でして……まったく発起人という名義を貸しただけでして……発起人としてかようなことを申しあげる