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うんめいろんしゃ

運命論者

国木田 独歩

「山比古 第十號」1903(明治36)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,357 字 · 34 页

青空文庫

そして一日も早く独立の生活を営み得るようになり、自分は大塚の家から別れ、義弟の秀輔に家督を譲りたいものと深く心に決する処があったのです。

三年の月日は忽ち逝き、僕は首尾よく学校を卒業しましたが、猶お養父の言葉に従い、一年間更に勉強して、さて弁護士の試験を受けました処、意外の上首尾、養父も大よろこびで早速其友なる井上博士の法律事務所に周旋して呉れました。

兎も角も一人前の弁護士となって日々京橋区なる事務所に通うて居ましたが、若し彼のまゝで今日になったら、養父も其目的通りに僕を始末し、僕も平穏な月日を送って益々前途の幸福を楽んで居たでしょう。

けれども、僕は如何しても悪運の児であったのです。殆ど何人も想像することの出来ない陥穽が僕の前に出来て居て、悪運の鬼は惨刻にも僕を突き落しました。

五

井上博士は横浜にも一ヶ所事務所を持て居ましたが、僕は二十五の春、此事務所に詰めることとなり、名は井上の部下であっても其実は僕が独立でやるのと同じことでした。年齢の割合には早い立身と云っても可いだろうと思います。

処が横浜に高橋という雑貨商があって、随分盛大にやって居ましたが、其主人は女で名は梅、所天は二三年前に亡なって一人娘の里子というを相手に、先ず贅沢な暮を仕て居たのです。