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「どうひょう」をかきおえて
「道標」を書き終えて
宮本 百合子
「新日本文学」1951(昭和26)年3月号、「展望」1951(昭和26)年3月号(同時掲載)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,167 字 · 14 页
だが、きょうの現実が、果して、文学を再建した状態であるだろうか。文学の精神――現実批判と真実の追求の精神が、果して、それらの作家のどこにあるだろうか。隷属し、奴隷化した精神という言葉をきいてさえ、それらの人々はただ冷笑して平気であるほど、きょうの日本文学の精神のある部分は性がぬけきっている。
さて、わたしという一人の作家が、ここに書いて来たあれやこれやの思いにかられて、延々たる長篇の、辛うじてその中途へまで辿りついたとき、二つの肩はずっしりとした明日からの仕事の重さを感じているばかりであるのは、当然ではないだろうか。わたしは「道標」三部をかいて、やっとトンネルだけは出たように感じる。社会主義リアリズムの方法は、わたしにとって、「それによって創作する」という方法――ジョイスの方法と伊藤整の小説のような関係には、なかった。わたしらしい、はためかまわずの方法で「道標」をかきはじめ、かきすすみ、中断しないで書き終ることで、作品とともに、女主人公の成長とともに段々社会主義リアリズムという方法がふくんでいる現代の諸課題のいく部分かを会得できはじめたように感じている。