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「どうひょう」をかきおえて

「道標」を書き終えて

宮本 百合子

「新日本文学」1951(昭和26)年3月号、「展望」1951(昭和26)年3月号(同時掲載)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,167 字 · 14 页

青空文庫

少しわかりかけてみると、少くともわたしとしては、「文学」というものについての諸理解の常套性や文学を通じてわたしたちの生活感情にもちこまれている人間理解の型のふるくささに、びっくりしているし、政治と文学との具体的関係についての粗末な先入観にもおどろかされている。日本語の特別な性格についても、おどろいている。(このことは別にふれたいと思う。)

従来の文学評価では、ある作品は特定の個人の才能の精華という風に考えられて来た。プロレタリア文学運動は、文学発成の社会的・階級的基盤については個人主義を超克したモメントを示したのであったが、作家と作品とそれに対する批評の関係では、やはり作家個人に執する古風さを脱しなかった。

社会主義リアリズムの批評の方法は、この点で、人間理性の普遍性ともいうべき素質をもっともっとゆたかにしてゆくだろうと思う。ある作品に対して批評する場合、その作家個人の能力の限界、その作品のかかれた歴史の性格そのほかを客観的に展開して読者に示し、ほかの誰かが、その一人の作家の可能性では及びがたかったのこりの部分を更に独自的に発展させて見ようとするようないい刺戟をうけるように{し}なければなるまい。