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「どうひょう」をかきおえて

「道標」を書き終えて

宮本 百合子

「新日本文学」1951(昭和26)年3月号、「展望」1951(昭和26)年3月号(同時掲載)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,167 字 · 14 页

青空文庫

軍協力の文学ではなくて、人間理性をみとめ、条理を理解し、人間心情に立つ文学の可能を防衛しようとする意嚮も、真実だった。しかし、第二次大戦を通じて、世界の人間性は、過去の歴史のいつのときよりもヒュマニティーの主張において具体性をそなえて来た。実践的な力をそなえて来て、組織と行動の意味を把握して来た。こんにち、第三次大戦の挑発に対して、全世界の規模で実行されつつある民族自立の運動と平和擁護の運動の現実が、この事実を明瞭に語っている。

世界各国で、それぞれの国の文学は、質的に変化し、発展しようとしている。社会主義リアリズムは、やがて世界の文芸思潮となるだろう。それぞれの国のそれぞれの現実によってヴァリエーションが加えられつつもそうなってゆかなければ、従来のフランス文学の方法では必しも新しいフランス人を描けないことはわかって来ているのだし、日本の現代文学は日本の社会の現実にある動き、人間的諸関係を描ききれなくなっているのだから。

人間みずからが、資本主義社会の人間性歪曲とその断片化から自身の歴史を救い出そうとしているこんにちの努力と、それを再現しようとする文学上の実験は、一部の文芸批評家が云うように、決して、社会主義的アイディアリズムではない。