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せんきょにんにあたう

選挙人に与う

大隈 重信

「新日本 第貮卷第五號」冨山房、1912(明治45)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,553 字 · 15 页

青空文庫

三 〔棄権の増加と政界の腐敗〕

富を作るには当然資本を投ぜねばならぬ。国力を発展して世界的に雄飛するには、どうしてもこれでなくてはいかぬという様なことを唱えている。皮相の観察を以てすれば如何にももっともらしく聞えるが、それならばその財源は如何して造るかといえば、直ぐ返答に窮してしまうのは解り切った話である。財政はもとより魔術に非ず。無から有を生ずる理無し。既に限りある収入を以て限りなき政務を遂行せざるべからざる以上、よく事物の軽重緩急を謀って、徐々に国力の発展を期するより外に途は無いのである。全体からいえば、国家自身がすべての産業的設計を為すというのからして大なる間違いで、国民の知識と富の程度さえ増して来れば、放っておいても個人もしくは団体が自ら進んでこれに当るのである。

三 〔棄権の増加と政界の腐敗〕

こういう風に実行も出来ぬ地方問題を好餌として、一方には無邪気なる選挙区民を誑らかし、他方では公共機関を誘惑して、これをその味方につけんとする。これが百弊の生ずる源で、選挙の神聖が保たれぬゆえんである。そこで多少思慮のある人は、自分で選挙権を抛棄してしまう。即ち棄権ということが近来非常に増加したのは、これがためである。