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いこん

遺恨

坂口 安吾

「娯楽世界 第二巻第五号」銀五書房、1948(昭和23)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,706 字 · 22 页

青空文庫

と云って、アキ子と男のことを噂をしたり、大人みたいに首をかしげて、

「奥さんに家出されて、ユーウツなんて、僕たち、大人の気持は分らないなア。僕たちは、恋愛しないから、子供なのかな。然し、恋愛したいと思いませんねエ。だけど、素敵な美人と友達になりたいですね」

「恋愛と友達と違うのかい?」

「エヘ」

はずかしそうに笑う。そして、

「然し、わからないな。先生の奥さんそれほど美人じゃないと思うけど、新しく探した方が賢明だなア。もっと、ましな女が、いくらだっていらア。なア、ホラ」

彼らは先生に同情などしないのである。然し、アキ子とその相手を羨んでいるわけでもない。つきとめてみると、要するに、なんでもないだけのことらしい。そして

「ネエ、先生。僕のところへ遊びにいらっしゃいよ。僕、パンパンと同棲していますよ。よく稼ぎますね」

「パンパンに食べさして貰っているの?」

「ちがいますよ。可哀そうだから、部屋をかしてやってるのです。三人いますよ」

「三人とも、君のいゝ人かい」

「アレ、変だなア。先生、僕たち、そんなこと、考えていないですよ。先生は大人なんだな。僕、はずかしいや」

先生の方が、はずかしくなって、顔をあからめた。