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いぶつ・いせきとれきしけんきゅう
遺物・遺蹟と歴史研究
喜田 貞吉
「民族と歴史 第一巻第四号」1919(大正8)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,668 字 · 13 页
余輩といえども、なんら文献の拠るべきものなき遠い古代の遺物・遺蹟については、もちろんその層位的研究や、型式学的研究から得た仮定説に満足するものである。しかしながら、いやしくも文献を存する時代の物にあっては、必ずまずそれによって、文献の示すところの当否を検定することを怠らない。これについては、常に記録の伝うるところと比較することを忘れてはならぬ。余輩がかつて古墳を研究して、棺・槨・壙の問題に少からぬ論弁を費したのも、畢竟これがためであった。古書にいわゆる棺・槨・壙が、現在の遺物・遺蹟についてそのいずれに当るかを明かにすることなしには、とうていこれを文献に引き当てて研究することが出来ないのである。いかに有益な史料がそこに横わっておっても、それを研究上に応用することが出来ないのである。しかるにわが浜田博士は、余輩のこの研究を評して、「問題は槨とか棺とかの定義よりも、其の者の本質にある」(『歴史と地理』第三巻第二号、「日本の古墳に就いて」)と皮肉られた。なんら文献に依頼せず、これを穿鑿研究することなしに、「確実なる文献の拠るべきものの無い我が古墳」(同上)だと頭から極めてしまっての博士の研究態度としては、なるほど名称がなんとあろうと、定義がどうであろうと、それは瑣末の問題であるかも知れぬ。