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じゃしゅうもん
邪宗門
「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页
「たとい河原とは申しながら、予も洛中に住まうものじゃ。堀川の殿がこの日頃、姫君のもとへしげしげと、通わるる趣も知っては居る。――」
やがてまた摩利信乃法師は、相不変もの静かな声で、独り言のように言を継ぐと、
「が、予は姫君が恋しゅうて、御意得たいと申すのではない。予の業欲に憧るる心は、一度唐土にさすらって、紅毛碧眼の胡僧の口から、天上皇帝の御教を聴聞すると共に、滅びてしもうた。ただ、予が胸を痛めるのは、あの玉のような姫君も、この天地を造らせ給うた天上皇帝を知られぬ事じゃ。されば、神と云い仏と云う天魔外道の類を信仰せられて、その形になぞらえた木石にも香花を供えられる。かくてはやがて命終の期に臨んで、永劫消えぬ地獄の火に焼かれ給うに相違ない。予はその事を思う度に、阿鼻大城の暗の底へ逆落しに落ちさせらるる、あえかな姫君の姿さえありありと眼に浮んで来るのじゃ。現に昨夜も。――」
こう云いかけて、あの沙門はさも感慨に堪えないらしく、次第に力の籠って来た口をしばらくの間とざしました。
二十三
「昨晩、何かあったのでございますか。」
ほど経て平太夫が、心配そうに、こう相手の言を促しますと、摩利信乃法師はふと我に返ったように、また元の静な声で、一言毎に間を置きながら、