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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页

青空文庫

」と、声も荒らかに呼ばわりました。

が、何しろただ今も、検非違使たちが目のあたりに、気を失って倒れたのを見て居るのでございますから、御簾の内も御簾の外も、水を打ったように声を呑んで、僧俗ともに誰一人、進んであの沙門の法力を試みようと致すものは見えません。所詮は長尾の僧都は申すまでもなく、その日御見えになっていらしった山の座主や仁和寺の僧正も、現人神のような摩利信乃法師に、胆を御挫かれになったのでございましょう。供養の庭はしばらくの間、竜舟の音楽も声を絶って、造り花の蓮華にふる日の光の音さえ聞えたくらい、しんと静まり返ってしまいました。

沙門はそれにまた一層力を得たのでございましょう。例の十文字の護符をさしかざして、天狗のように嘲笑いますと、

「これはまた笑止千万な。南都北嶺とやらの聖僧たちも少からぬように見うけたが、一人としてこの摩利信乃法師と法力を較べようずものも現れぬは、さては天上皇帝を始め奉り、諸天童子の御神光に恐れをなして、貴賤老若の嫌いなく、吾が摩利の法門に帰依し奉ったものと見える。さらば此場において、先ず山の座主から一人一人灌頂の儀式を行うてとらせようか。