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かっこうのおとずれ
郭公のおとずれ
中谷 宇吉郎
「婦人公論」1940(昭和15)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,509 字 · 3 页
私のつとめている大学の構内にも、郭公が鳴く。そしてそのおとずれがあってしばらくすると、東京の特に女学生たちの修学旅行の白いパラソルの列が、毎日のように芝生の間に点綴するのが見られる。
そういう一行は、大抵は大学の職員や道庁の人たちの夫人を卒業生の中にもっているらしい。そして、そういう夫人たちが二、三人か、時とすると四、五人も、列の先頭に立って歩いているのが見られることがある。
東京などから札幌へ移り住んでいる人たちには、何と言っても、こういうお客様が来ることは嬉しいのであろう。時とすると、夫人ばかりでなく、その御主人の方たちまで案内に加わっていることがある。
いつかこんな面白い話があった。
東京の或る女学校の修学旅行がやって来たので、前から頼まれていたとかで、私の知り合いの人が、夫人と一緒に大学だの植物園だのを案内したことがあった。その時にはほかにまだ夫人連に狩り出された御主人が二、三人あったそうである。
植物園の広い芝生は、東京などとちがって、何処でも自由に歩き廻って良いことになっている。楡の大きい樹が、葉蔭が暗くなるばかり繁って、ところどころに芝生の上に影をおとしている。