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ごうすけほうし

郷介法師

国枝 史郎

「ポケット」1925(大正14)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,163 字 · 21 页

青空文庫

……足利の武威衰えて以来、世はいわゆる戦国となり、仁義道徳は地に堕ちてしまった。親が子を殺し子が親を害する。恐ろしいは世の中の態だ。……親などはない方が気楽かもしれない」

――こう思うようなこともあった。

「しかし、それでは寂しいな。やはり親はあった方がいい。ああ両親に逢いたいものだ」

親に対する思慕の情は捨ようとしても捨られないのであった。

「だが、それにしても俺の親は、どうして俺を振り捨て行方知れずになったのであろう? 俺は両親の顔をさえ知らぬ」

彼の心はこれを思うといよいよ寂しくなるのであった。

「最所治部めが叛いたそうな。毛利元就へ款を通じ俺に鋒先を向けるそうな」

備前国矢津の城主浮田直家はこう云って癇癪筋を額に浮かべた。

「不都合千万でございますな」

お気に入りの近習岡郷介はこれも無念そうに相槌を打ったが、

「余人はともかく治部殿は殿のご縁者ではございませぬか」

「だから一層残念だ」

「これは許しては置けませぬな」

「許しては置けない! 許しては置けない!」

直家の声は物狂わしい。

「謀叛の原因は何でございましょう?」

郷介はじっと眼を据えた。

「ああ原因か。