轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

とかいのなかのことう

都会の中の孤島

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第四号」1953(昭和28)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,205 字 · 27 页

青空文庫

スパナーはどこにもなかった。

「すると、オレのスパナーだ!」

グズ弁はそこでテントーしてしまったのである。冷静を失いながらも、持ち前のカメレオン的自衛本能だけはうごいた。そして彼はいつも自然にそうであるように、それに導かれて行動した。

洋服をつけ、オーバーをひッかけ、あたりに落し物はないかと見まわし、屋根裏を降りて、スパナーをフトコロに忍ばせ、足音を殺して、外へでた。

それはスパナーをひそかに処分するためだった。ついに彼はスパナーを川の中へ投じることに成功した。しかし、そこで精も根もつきはててしまった。再び屋根裏へ戻って、素知らぬ顔でねているような芸当はとてもできなくなり、足にまかせて、さまよいはじめてしまったのである。

二日目に家に帰った。張りこんでいた警官に捕えられた。

いかに真実を言い張っても通らなかった。まさに彼の言い張ることは何よりもウソッパチに見えた。

彼が殺して逃げたという解釈は彼の言訳の何百倍もすべてにピッタリするのであった。のみならず、彼が捨てたスパナーは自供の場所から現れた。それは当り前の話だけれどもこれもまた、彼が殺さなかった証拠になるよりも、殺した証拠となる率が何百倍も高かったのである。