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とかいのなかのことう
都会の中の孤島
「小説新潮 第七巻第四号」1953(昭和28)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,205 字 · 27 页
そしてミヤ子がそういう女であるということが、やがてグズ弁にも分ってきた。ミヤ子がグズ弁に身体を許したのは結婚のためではなくて、金のためだ。ミヤ子は金のない男を相手にしなかった。
何人かの情夫を目の前において、その一夜の恋人の役を当日の所持金の額で定めるのは日常のことであった。むろん、あからさまに所持金くらべをやるわけではないが、それとなくフトコロを当った上で、
「あなたは今晩帰ってね」
という風にささやく。結局はあからさまに所持金くらべをしたことと同じであるが、情夫たちはそれに従わざるを得ないような習慣が、彼女の手腕によって、自然生れてしまうのである。甚だしい時には、古顔がみんな追ッ払われて、その晩はじめての新顔が残されることもある。この新顔が自分だけ色男だと思い上ることのできるのは、その晩だけで、次の機会に事情が分ると、たいがいそれで再び姿を見せなくなってしまう。
むろんサヤ当てもある。しかし孤島の女王がこうハッキリ金銭で取引きすることを明示しておけば、それは公娼の場合と同じようなもので、事実古顔同士の場合には、公娼におけるマワシのような事実が平穏裡に行われることも珍しいことではなかったのである。