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とかいのゆうき

都会の幽気

豊島 与志雄

「サンデー毎日」1924(大正13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,559 字 · 21 页

青空文庫

気のせいだの空気の流れだのと、そんな理屈では安心がなりかねた。後からついてくる気配だけならまだよいが、いろんな姿が影のように四方に浮き出して、私の方へ飛びついてくるのは、どう考えても合点がゆかなかった。私自身の気のせいではなく、そういう煙のような奴等が、そこいらにふらふらと存在してるに違いなかった。

私は室の中に閉じ籠って、これからどうしたらよいかしらと、夢のようなことを考えながら、昼間も曇った日はなるべく外に出ないことにし、夜分はなるべく早く床につくことにし、友人達を電話で呼び寄せては、碁や将棋をやったり花合せをしたりして、出来るだけ面白く時間をつぶそうとした。所が一人になるとふっと、魔がさすように気が滅入って、何となく電燈の光も淡くなってゆき、室の隅々に濛とした気が立罩めて、馬鹿馬鹿しい不安に襲われることがあった。そういう時私は、一生懸命机にかじりついて、面白そうな書物を読み耽った。物語の興味に惹かされて、一時間も読み続けてるうちに、一寸心に疲れた弛みが出来ると、しきりに右手の斜め上の方が気になり出した。其処に何やらぼんやりしたものがぶら下っている。