轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とかいのゆうき
都会の幽気
豊島 与志雄
「サンデー毎日」1924(大正13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,559 字 · 21 页
嚇かすなよ! という気持で四五歩進むと、此度は向うの軒下に、なにやら茫っとした人影が佇んでいる。でも私は、酔ってはいたしそんなことに馴れてもいたので、例の奴が先廻りをしたなというくらいの考えで、平気で歩いて行って、ひょいと見ると、其処には何にもなくて、六七尺ばかりの上の軒下に女中部屋らしい小窓がついていて、この夜更けに雨戸も閉めなく、木格子の中の煤けた障子の紙に、淡く電燈の光りがさしていた。私は一寸足を止めて眺めやった。すると全く思いがけなく、鬢の毛を少しほつらした女の頭が、障子にすーっと影を落して、またすーっと消えた。消えた瞬間に私はぞっと身震いをした。怪しい幻覚が私を囚えた。薄穢い豊満な肉体をしている女中が、そこの障子に姿を写すのを待受けて、一人の色情狂が佇んでいる。それが私自身の姿に乗り移ってきた。私は堪らなく忌わしい怪しい心乱れがして、つと其処を離れて歩き出した。暫くして或る電柱の影から、何とはなしに振返ってみると、先刻の窓からはただ茫とした淡い明るみがさしてるきりで、其処には何の姿も見えなかったが、そうして電柱の影から覗いてる自分自身と、同じ場所に同じ姿で、何かを待伏せしている刑事の影が現われてきて、しきりに私へ乗り移ろうとし初めた。