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とかいはぜいたくだ
都会はぜいたくだ
小川 未明
「教育研究」1930(昭和5)年8月3日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,024 字 · 8 页
なぜなら、雪の降る寒い晩に、おじいさんは、出かけてゆきました。村の子供らは、窓の外で鳴り叫ぶあらしの音に耳を澄まして、幾枚も蒲団をかぶっても、まだ震えがちにちぢこまっているのに、おじいさんは出かけなければなりませんでした。
川の上には雪が積もっていました。そして、その下の流れは、止まっていました。おじいさんは雪を掘り氷を破ると、その下に、黒い水がものすごく、じっと見上げています。おじいさんは、カンテラの火で水の面を照らしました。これは、眠っている魚を呼び寄せるためであります。
もう長い間、穴の中に、または、深い水底に眠って、春のくるのを待っていた魚たちは、ふいに明るくなったので、びっくりしました。
「なんだろうな。」
「月でないかしらん?」
「雪が積もっているのに、月のさすはずがないじゃないか。」
「でも、明るく、なにか、水を照らしているようだ。」
「それにちがいない。おれたちは、もう長い間眠った。いつのまにか、雪が消えて春になったのでないだろうか。」
「そんなことはない。まだ、水が、こんなに冷たい。そして、どこにも春らしい気分はこない。こんな変わったことのあるときは、要心が必要なのだ。