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しゅうぶん
醜聞
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1964(昭和39)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,900 字 · 46 页
「こう根がひろがっていては、ちょっと手がつけられませんな」報告書を持って来た横目付の堀三左衛門が云った、「おもて沙汰にしては藩の名にきずがつきますし、家中ぜんたいの恥にもなります、どう致しましょうか」
読み終った報告書をとじながら、功刀功兵衛は溜息をつき、暫く考えてみよう、と答えた。もう下城の刻に近く、その役部屋の中もたそがれの色が濃くなって、しんとした寒さが、部屋の四隅からひろがってくるように感じられた。功兵衛の役目は城代家老に直属している、勘定吟味役もその管轄内にあるから、まず城代に話さなければならない。けれども城代家老の生田五郎左衛門は、三十一歳というとしの若さだけでなく、生れつきの癇癪もちでせっかちで、些細な問題でもすぐ面倒なことにしてしまう癖があった。
――たとえ毒舌をあびせられるにしても、やはり靱町の意見を聞いてからにすべきだろう。
功兵衛はそう思った。
その日下城のとき、大手門のところで彼は供の者を先に帰らせた。靱町へ寄るという妻への伝言を告げると、宇野幾馬は承知してゆきかけたが、急に思いだしたように戻って来た。
「あの保利橋のところで袖乞いをする乞食のことですが」