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しゅうぶん

醜聞

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1964(昭和39)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,900 字 · 46 页

青空文庫

そう云ったさくらの言葉に、彼は自分が裸にされたような恥ずかしさと、反省感に浸された。夜の寝間で妻を抱くときでも、かみしもを着けたようだし、鎧甲を着けたようでさえあったという。さくらの非難は一般的ではなくかたよっている、わがままで色情のつよい女の不満だということに間違いはない、ということは誰に聞かせても異論のないところだろう。にもかかわらず、家名や侍の面目を保つだけに生きて、人間らしい生活がなかった、という指摘には反論のしようがないし、自分を弁護するだけの信念もなかった。侍であるまえに人間の「男」であってもらいたかった、という言葉は、彼がこれまでにかつて聞いたことのないものであった。その言葉のまえには、侍の面目とか家名などというものも、虚栄のようにしか思えない感じであった。

「しかしおれにはおれの生きかたしかできなかった」と彼は呟いた、「おれには功刀の家名が大切だったし侍として他に恥じない人間になろうとつとめただけだ」

そう呟きながらも、さくらに云われたことは、抵抗しようのないちからで彼の弱点をあばき続けるように思えた。

住居へ帰り、着替えをするとき、家扶の吉川甚左衛門が、妻のふじが寝ていることを告げた。