轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
やこ
野狐
田中 英光
「知識人」1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,615 字 · 39 页
しかし、結局、音痴でダンス嫌いの私には、このほうが気楽でよい。
一曲、踊って席に戻ると、桂子の組長だという、しっかりした美貌の女給が私の前に坐る。一目みて、江戸っ子と分る、垢ぬけした化粧に歯ぎれのよい口調。暫く話し合っているうち、私は彼女が、私の学生時代、合宿していた艇庫の近くのある料理屋の娘と分る。それは昔、とにかく、カフェにある種の義理人情や、エチケットの存在していたのを知っている女給さんである。
彼女に比べると、私の桂子はひどく泥臭く、もの欲しげな女にみえた。私は数日前の放浪時代、浅草のレビューの女優さんたちとものを食べ、酒を飲んだこともあったが、彼女らも敗戦前の彼女らに比べ、夢やヴァニティがなく、ただ物欲的なのに失望した。そして、それよりも失望したのが、この新興喫茶というものの女給たち。そこに、一口にいえば、こんな風にガッツいていないタイプの組長に逢って、私は嬉しかった。
その夜も酔ってしまうと、省線に乗るのが面倒になり、ハイヤーで帰る。これは日本の木炭自動車で八百円。帰って、ふたりで寝ると、習慣となった摩擦行為が繰返される。私は自分の肉体の衰えと、彼女の身体のハリキリ方を身にしみて感じる。