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ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:奈々子、隣の嫁、春の潮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,271 字 · 144 页

青空文庫

「薊さんそれでは困る、どうかまあ怒らないでください。とよが事はとにかく、どうぞ心持ちを直して帰ってください」

お千代はただしがみついて離さない。薊はようやく再び座に返った、老人は薊を見上げて、

「ばかに怒ったな」

「おらも喧嘩に来たんじゃねいから、帰られるようにして帰せ」

薊の狂言はすこぶるうまかった、とうとう話はきまった。おとよは省作のために二年の間待ってる、二年たって省作が家を持てなければ、その時はおとよはもう父の心のままになる、決して我意をいわない、と父の書いた書付へ、おとよは爪印を押して、再び酒の飲み直しとなった。俄かに家内の様子が変る、祭りと正月が一度に来たようであった。

十三

薊が一切を呑み込んで話は無造作にまとまる。二人を結婚さしておいて、省作を東京へやってもよいが、どうせ一緒にいないのだから、清六の前も遠慮して、家を持ってから東京で祝儀をやるがよかろうということになる。佐介も一夜省作の家を訪うて、そのいさくさなしの気質を丸出しにして、省作の兄と二人で二升の酒を尽くし、おはまを相手に踊りまでおどった。兄は佐介の元気を愛して大いに話し口が合う。