轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:奈々子、隣の嫁、春の潮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,271 字 · 144 页

青空文庫

森をもって分つ村々、色をもって分つ田園、何もかもほんのり立ち渡る霞につつまれて、ことごとく春という一つの感じに統一されてる。

遥かに聞ゆる九十九里の波の音、夜から昼から間断なく、どうどうどうどうと穏やかな響きを霞の底に伝えている。九十九里の波はいつでも鳴ってる、ただ春の響きが人を動かす。九十九里付近一帯の村落に生い立ったものは、この波の音を直ちに春の音と感じている。秋の声ということばがあるが、九十九里一帯の地には秋の声はなくてただ春の音がある。

人の心を穏やかに穏やかにと間断なく打ちなだめているかと思われるは、この九十九里の春の音である。幾千年の昔からこの春の音で打ちなだめられてきた上総下総の人には、ほとんど沈痛な性質を欠いている。秋の声を知らない人に沈痛な趣味のありようがない。秋の声は知らないでただ春の音ばかり知ってる両総の人の粋は温良の二字によって説明される。

省作はその温良な青年である。どうしたって省作を憎むのは憎む方が悪いとしか思われぬ。省作は到底春の人である。慚愧不安の境涯にあってもなお悠々迫らぬ趣がある。省作は泣いても春雨の曇りであって雪気の時雨ではない。