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ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:奈々子、隣の嫁、春の潮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,271 字 · 144 页

青空文庫

白い部分は光沢を失ってやや青みを帯んでいる。引き締まった顔がいよいよ引き締まって、眼は何となし曇っている。これを心に悩みあるものと解らないようでは恋の話はできない。

それのみならず、おとよは愛想のよい人でだれと話してもよく笑う。よく笑うけれどそれは真からの笑いではない。ただおはまが来た時にばかり、真に嬉しそうな笑いを見せる。それはどういうわけかと聞かなくても解ろう。それでおはまが帰る時には、どうかすると涙を落すことがある。

それならばおはまを捕えて、省作の話ばかりするかと見るに決してそうでもない。省作の話はむしろあまりしたがらない。いつでも少し立ち入った話になると、もうおよしと言ってしまう。直接には決して自分の心持ちを言わない。また省作の心を聞こうともせぬ。その癖、省作の事については僅かな事にまで想像以外に神経過敏である。深田の家は財産家であるとか、省作は深田の家の者に気に入られているとか、省作は元気よく深田の家に働いているとか、省作はあまり自分の家へ帰ってこないとか、こんな噂を聞こうものなら、何べん同じ噂を聞いても、人の前にいられなくなって、なんとか言って寝てしまうのが常である。