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のぎくのはか

野菊の墓

伊藤 左千夫

「ホトトギス」1906(明治39)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,539 字 · 67 页

青空文庫

しばしば民子の手を採って曳いてやる。

近く二三日以来の二人の感情では、民子が求めるならば僕はどんなことでも拒まれない、また僕が求めるならやはりどんなことでも民子は決して拒みはしない。そういう間柄でありつつも、飽くまで臆病に飽くまで気の小さな両人は、嘗て一度も有意味に手などを採ったことはなかった。しかるに今日は偶然の事から屡手を採り合うに至った。這辺の一種云うべからざる愉快な感情は経験ある人にして初めて語ることが出来る。

「民さん、ここまでくれば、清水はあすこに見えます。これから僕が一人で行ってくるからここに待って居なさい。僕が見えて居たら居られるでしょう」

「ほんとに政夫さんの御厄介ですね……そんなにだだを言っては済まないから、ここで待ちましょう。あらア野葡萄があった」

僕は水を汲んでの帰りに、水筒は腰に結いつけ、あたりを少し許り探って、『あけび』四五十と野葡萄一もくさを採り、竜胆の花の美しいのを五六本見つけて帰ってきた。帰りは下りだから無造作に二人で降りる。畑へ出口で僕は春蘭の大きいのを見つけた。

「民さん、僕は一寸『アックリ』を掘ってゆくから、この『あけび』