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きんごじゅうりょう
金五十両
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,843 字 · 23 页
六
藤巻という人は聞きながらそこへ坐り、両手を膝にきちんと置いて眼をつむった。
頬骨の高い眉の厚い、謹厳そのものといった顔だちだが、癇性なのか片頬だけ時どき微かに痙攣るのがみえた。話し終って袱紗包を差出すと、相手はそれに眼も呉れないで鄭重に頭を下げた。
「それはそれは、遠路のところ態わざお届け下すって忝のうござった、源之丞は拙者の伜でござる、若年者のうろたえた思慮でかような御迷惑をお掛け申し、なんともお詑びの致しようがござらぬ、ひらに御勘弁が願いたい」
六
「いえ私のほうこそお詑びがございます」
宗吉は慌てて低頭した。
「……正直に恥を申上げますが、お預かり申したとき私は無一文でございました、そのうえ別に事情がございまして、どうしても二両一分ばかり必要になり、ちょっとした考え違いから小粒のほうの封を切ってしまいました、もちろんこの袱紗の中には五十金そろえてありますが、そういう訳で封を切ってございますので、そこをどうかお赦し下さいますよう、お願い申上げます」
「いやその斟酌には及ばない、このほうにはお志だけで充分でござる、失礼ながら暫く……」
藤巻中書はこう会釈をし、袱紗包を持っていちど奥へ去ったが、やや暫くして戻り、紙に包んだ物を白扇に載せて差出した。