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きんごじゅうりょう
金五十両
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,843 字 · 23 页
「こりゃあ、……少し許りじゃあないぞ」
受取ったとき金だということは見当がついていた、然しいま畳へ落ちた音は重たかった、さすがに胸を踊らせながら包を開くと、まず上に手紙のようなものが載っている、彼は手早く披いて読んだ。
それは極めて簡単なもので、
「昨日、早の使者があって、伜源之丞が舞坂に於て決闘し、相討となって死んだという報知があった、理由は云えないが膳所藩のおための死で、自分として心残りはない、然し伜の決闘は親の自分が責任を負わなければならぬ、今日あすにも追放の御達しがあると思い、その支度をしている。
就いてはせっかく遠路お届けにあずかった物だが、自分たち夫婦にはもはや使途もなし、旁々伜が最期の際の御縁もゆかしく思われるので、是れはそのままそのもとに納めて頂きたい、いかなる境涯の人かは知らないが、末ながくお栄えなさるよう祈っている」
あらましそういう意味のことが書いてあった。
……それは爽やかに割切った、清すがしいほど綾のない文言である。
深い仔細はわからないが、国のため主家のためによろこんで死ぬ子、些かも心残りなくその責任を負って追放される親、……彼が馬郡の宿でことづかった金の蔭には、こんなにも悲痛な、けれどこんなにも力づよい生きざまが隠れていたのだ。