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きんごじゅうりょう

金五十両

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,843 字 · 23 页

青空文庫

彼は手紙を巻いて金包をあけた。持っていったままの五十両がそっくり出てきた、五十両。

……丁稚奉公を十年して溜めたあげく、伯母に奪られた金は四十五両、殆んど労せずしていま此処に五十両。

「金じゃあない、金じゃあないんだ」

宗吉は呻くようにこう呟いた。

「十年溜めたものを横取りされた、おたまに騙された、清吉にどうされた、おれはそんなことくらいでやけになっていた、……みんなてめえのこと許りじゃあないか、てめえ独りの……」

宗吉は身ぶるいをした。

「源之丞という人は自分のために死んだんじゃあない、あの親御さんは禄を放されても悔んだり怨んだりしちゃあいない、それ許りかちっとも心残りはないとさえ云っている、……こう生きなくちゃあいけないんだ、人間はこう生きなくちゃあいけないんだ」

世の中の広さ、人間の生き方の深さ、宗吉にはいまおぼろげながらそれが見えだしたようだ。彼は大きなちからが躯いっぱいに溢れるような気持を感じながら、そっと眼で笑ってこう呟いた。

「おまえに逢えてよかったな、お滝、……これからいっしょにやろう、世の中は苦労のしがいがあるぜ」