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きんぞくにんげん

金属人間

海野 十三

「サイエンス」1947(昭和22)年12月~1949(昭和24)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 78,616 字 · 157 页

青空文庫

犯人と思われる者のすがたを見、または足音を聞かなかったか。それから最初にこの事件に気がついたのは何時ごろだったか、などについて訊問していった。

これに対する博士の答えは、かんたんであり、そして明瞭であった。

それによると、博士は昨夕いらい、徹夜実験をつづけていたこと。犯行の音も聞かず、犯人のすがたも見なかったこと。そして博士はその徹夜のうち、二度ばかり実験室を出てかわやへいっただけで、他は実験室ばかりにいたことを述べた。

検事は、博士のことばについて、いろいろとものたりなさを感じた。あれだけの殺人が、十間ほどはなれているにしても、同じ屋根の下で行なわれたのに、被害者の声も耳にしなかったというのはおかしく思われた。

「じゃあ、誰がお三根を殺したと思われますか。ご意見を参考までにお聞きしたいのですが」

「知らんです。人の私行については興味を持っていません」

「まさかあなたがその下手人ではありますまいね」

検事のこのことばは、はじめてこの無神経な冷血動物のような博士を、とびあがらせる力があった。

「な、何ですって。ぼくが殺したというのですか。どこにぼくがこの女を殺さねばならない必要があるのです。