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きんざんそうわ
金山揷話
大鹿 卓
「中央公論」1939(昭和14)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,736 字 · 22 页
すると私達の車室へ、どやどやと一団の人々が乗り込んできた。白い造花や黒リボンのついた額入りの写真などが持ち込まれた。軍服の人や駅員なども入りまじって何かと世話をしだした。やがて窓硝子に、英霊と書いた黒枠の紙が貼りつけられた。いずれ此処の聯隊で受けとった遺骨を護りつつ、さらに奥地の開墾地へとかえってゆく人々にちがいなかった。黒紋付から抜きでている赤黒い頸や皺の太い顔つきが、彼等の境涯をもの語っていた。私達はその有様に遠慮して次の車へ移ることにした。しかしそれから後というものは、とまる駅とまる駅に、青年団や、小学校の生徒たちや、婦人会の上っ張りをまとった女達が行儀よく整列していて、霏々と吹きつける雪に頬をうたせながら、粛々と英霊を見送るのだった。或る駅では僧侶の姿さえまじっていて、読経の声がきこえてきた。そんな次第で、私達の車窓も車の停っているあいだ中は、そうした敬虔の念の素朴にあらわれでた顔々に自然と覗き込まれることになり、葷酒を帯びた私達は申しわけないような思いを重ねる仕儀だった。森山も私も言葉すくなくなった。
もちろん私の微醺はまもなく醒めてしまった。